連載小説:第1話 動物をさらう影【ダックスフンド探偵モカとタカシの事件簿 ~消えたペットたち~ 】
ーあらすじー
舞台はDoxie Watchが誕生したオーストラリアのメルボルン。静かなこの街で、突然としてペットたちが次々と姿を消すという不穏な事件が発生する。
フリーランスジャーナリストのタカシは、愛犬ミニチュアダックスフンドのモカと共にこの謎の解明に挑んでいく。
事件の背後に潜む闇と、犯人の計画に迫る二人は、市場や近隣の人々への聞き込みを重ね、徐々に真相へと近づいていく。
ー本編ー
第1話:動物をさらう影
ある日の夜、静かに街の裏通りを歩く人影があった。メルボルンの夜は静寂に包まれ、遠くで時折車の音が響くのみだった。
手にはペットフード店で特別にブレンドされた甘い香りのするドッグフードの袋を持っている。このフードは特別なもので、どんな犬でも引き寄せられる魅力的な香りを持っていた。
目的は、また一匹の犬を捕まえること。
その人物は注意深く周囲を確認し、人気の少ない場所にたどり着いた。この辺りは普段から人通りが少なく、夜になるとほとんど誰も通らないため、最適な場所だった。
街灯の明かりが薄暗く差し込む中、袋から少量のフードを取り出し、地面にそっと撒いた。甘い香りが夜風に乗って漂い始めると、まもなく遠くから犬の足音が近づいてくるのが聞こえる。
「大丈夫…安心して、こっちへおいで…」小声で囁きながら、犬が近づくのを待った。やがて、匂いに引き寄せられた一匹の小型犬が姿を現した。
犬は警戒心を抱くことなく、フードの香りに誘われるように足を進め、地面に撒かれたフードに夢中になって食べ始めた。
しばらく犬の様子を見守っていたその人物は、周囲に異変がないことを確認すると、静かに近づいていく。月明かりが淡く照らす中、影が犬に覆いかぶさるように伸びた。
「よし、今だ…」慎重にリードを取った。犬は一瞬驚いたように顔を上げたが、すぐに再びフードに夢中になった。
「これでお前も安心だよ。守ってあげる…」その犬を優しく撫でながらそう囁いた。その言葉には一種の安堵と狂気が交じり合っている。人物は犬を連れ、夜の闇に紛れて静かに歩き出した。
犬は、まるで自分が救われたかのように、従って歩いていた。
目的地は、「保護」したペットたちを集めている秘密の場所だった。この場所は、街の喧騒から遠く離れた、誰にも知られない隠れ家で、ペットたちを「大切に世話している」と自分に言い聞かせていた。
しかし、実際には彼らは自由を奪われ、孤独に閉じ込められていた。人物がその場所にたどり着くと、新たに捕まえた犬を他のペットたちのいる部屋へと連れて行く。
そこには、すでに何匹もの犬や猫たちが不安げに鳴いていた。そこへ新たな犬を中に加え、再び外の世界に戻る準備を始めた。
「ここが君たちの新しい家だ…もう、誰にも邪魔されないからね。」とその場を後にし、再び闇に紛れて姿を消した。
つづく