ダックスフンドが足を痛がるときは関節炎が原因かも!?
よちよち歩く見た目がかわいいダックスフンド。 胴長短足でずっしりとした体格のため、足や腰に負担がかかってしまうことが多いです。「足を痛がっている…」「何となく元気がない…」といった場合には、関節炎になっている可能性があります。 この記事ではダックスフンドの関節炎について、
- 原因とは?
- どんな症状が出るの?
- 治療と対策法
をお伝えしています。 愛犬ダックスフンドの足に痛みや違和感がありそう…という飼い主さんは、ぜひ読んでみてください。
ダックスフンドの関節炎とは?原因について
関節炎は、骨と骨のつなぎ目である関節に炎症が生じ、痛みや関節の動く範囲(関節可動域)が低下してしまう病気です。 関節には、骨の表面を覆っている弾力性のある関節軟骨というクッションのような組織があり、骨同士が直接ぶつからないようになっています。
この関節軟骨に障害や炎症が生じると、それを補うために関節周囲の骨が過度に増殖し、骨棘(こつきょく)という骨のトゲを生じます。 これに伴い、関節包(関節を包む結合組織)や滑膜組織(関節の内側を覆う薄い膜)、靭帯など周囲組織も変性し、痛みや関節可動域の減少を引き起こします。原因としては、
- 老化や加齢
- 感染症
- 免疫異常(関節リウマチや特発性免疫介在性多発性関節炎など)
といったことがあります。 ※特発性免疫介在性多発性関節炎では、重度の滑膜炎がみられる一方で、関節軟骨や骨にはほとんど病変がみられないことが特徴です。 また、前十字靭帯断裂、膝蓋骨脱臼などの他の病気に続発して発生することもあります。
関節炎ではどんな症状が出るのか?
「痛い!」と言えない愛犬だからこそ、そのサインを早く見つけてあげることが大切です。ダックスフンドの関節炎では、足に痛みや違和感を生じます。
- びっこをする
- 足を挙げている
- 歩きづらそう
- 後ろ足を気にする、なめたり噛んだりしている
- 散歩に行きたがらない
- ゆっくり歩く
- 段差を嫌うようになった
- 走らなくなった
などと足の痛みに関連する症状が現れることが特徴です。
感染性の関節炎や免疫異常にともなう関節炎では、発熱もしばしば認められます。それにあわせて、元気や食欲がなくなったり、寝ている時間が増えたり…という症状がみられることもあります。
以前と同じように触れようとすると嫌がる、噛んでくるといった『性格の変化』が生じることもあり、注意が必要です。
関節炎を疑うときの検査
ダックスフンドの関節炎を疑うときには、飼い主さんからの稟告と同時に、
- 触診
- 診察台での様子
- 歩行の様子
- レントゲン撮影
などをあわせて診断を行います。 場合によっては、血液検査で感染や炎症の数値(白血球数やCRPなど)を見たり、関節液の検査をすることもあります。 関節液を抜く検査では、色味や粘ちょう度をみたり、顕微鏡で白血球など炎症像の有無の確認を行います。
関節炎の治療法
いかなる症例であっても痛みをとってあげることは大切で、鎮痛剤や消炎剤を用いて治療を行います。関節リウマチや免疫介在性多発性関節炎の場合には、ステロイドや免疫抑制剤を使用し、過剰な免疫反応を抑えてあげます。
副作用がないかどうか、定期的に血液検査を行い、薬の量や種類の調整を行います。また、間葉系幹細胞治療という関節の免疫バランスを整える効果のある治療法を行える施設もあるので検討してみるといいでしょう。
感染が疑われる関節炎の場合には、抗生物質を使用します。入院をして、関節の洗浄およびドレーンの設置を行い、関節腔を清潔に保ちます。また、関節軟骨の修復の手助けは注射で行うことができます。
食事療法として、関節に配慮したような成分の入っている食事を与えることもいいかもしれません。例えば、グルコサミンやコンドロイチン硫酸など関節を保護する成分が入っているドッグフードがあります。
グルコサミンとコンドロイチン硫酸は、関節や皮膚などにある物質で、組織を柔軟にしたり、水分を保持して関節や肌の健康を保つ作用があります。この二つを合わせて摂取することで、相乗的な効果を示します。
サプリメントとして摂ることもいいですが、あらかじめ食事に配合されているものだと手軽に摂取が可能です。
関節炎の予防~自宅でできること
関節炎自体を予防することは難しいですが、関節に配慮した生活を送ることは可能です。
例えば、
- 床を滑らないようにする
- 段差を登らせないようにする
- 太らせない
フローリングのご家庭は多いと思いますが、ツルツルと滑ってしまい、足を痛めてしまうことは多いです。ダックスフンドは走ったり遊んだりすることが大好きな犬種なので、楽しくて転んでしまうシーンがしばしばあります。
貼り付けるタイプの滑りにくくするマットやカーペットなどを愛犬がよく過ごす場所に敷いてあげるといいでしょう。ソファーや階段から転倒して足を痛めてしまうこともよくあります。
危ない場所には行けないようにしたり、スロープを付けてあげたりして対応しましょう. また、適度な運動により、関節の可動域を広げて筋肉を増強することも大切です。
太らせないことは最も重要で、食事量や種類で対策するようになります。単純に『量を減らす』ことが重要ですが、空腹で耐えられない子の場合には、グラム当たりのカロリーが少ない減量食(ダイエット食)をあげるようにしましょう。
ちなみに、犬は運動で痩せることはできないので、かならず食事管理で対応する必要があります。
【まとめ】ダックスフンドが足を痛がるときは関節炎が原因かも!?
愛犬ダックスフンドが足を痛がるときには、関節炎が原因のことがあります。触診や歩様、レントゲン検査や滑液検査にて診断を行います。
治療は鎮痛剤やステロイド、抗生剤などで行い、あわせて体重管理や環境の改善が必要となります。 「歩き方が変…」「足を気にしている…」など不安に思うことがあったら、速やかに動物病院を受診するようにしましょう!
参考資料
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,犬の治療ガイド2020,EDUWARD Press,p672-p679
筆者について
犬や猫を診察する動物病院で獣医師として8年勤務。その後Webライターやペットの相談業務などに従事。