ダックスフンドはヘルニアの好発品種!初期症状や前兆を解説
ダックスフンドは椎間板ヘルニアになりやすい犬種です。 ある日突然に発症する病気ですが、「まずはどういった症状が出るのか?」を知っておくことで、すぐに対応することが可能となります。
この記事では、ダックスフンドが椎間板ヘルニアを発症した際の初期症状や前兆についてお伝えしています。 ダックスフンドを飼育している飼い主さんは、ぜひ読んでみてください。
ダックスフンドの椎間板ヘルニアの初期症状や前兆とは?
椎間板ヘルニアの初期には、『痛みに関連した症状』が出る特徴があります。
つまり、
- 背中を丸めている
- 歩きたがらない
- 階段や段差の上り下りをしない
- 散歩を嫌う
- 抱っこするとキャンと鳴く
- 震えている
- 姿勢が変(首を下に下げている)
- 上目遣いである
「なんとなく元気がない」「食欲が落ちてきた」といったことで気づかれることもあります。この時点で治療を開始すると、手術とならず、内科療法(注射や飲み薬など)のみで治ることが多いです。
症状が進行すると、手術をしても命を落とす危険性もあり、早めの対処が必要となります。『椎間板ヘルニアがどういった経過をたどるのか?』詳しく知るためには、以下のグレード分類を知る必要があります。
椎間板ヘルニアのグレード別症状
椎間便ヘルニアの重症度(グレード分類)は、頸部椎間板ヘルニアにおいて3段階、胸腰部椎間板ヘルニアについて5段階に大別されます。グレード分類は、症状の進行を知るのみならず、椎間板ヘルニアに対する治療法を選択する際の重要な項目の一つとなります。
なぜなら、重症度によって治療に対する予後が全く異なるためです。ただ、厳密な区切りや決まりはないので、獣医師により手術介入への判断時期は異なります。また、治療を行っている間に、グレードの進行が起こっていないかを確認することも重要です。
頸部椎間板ヘルニアについて
頸部の椎間板ヘルニアはグレード1~3に分けられます。
グレード1
グレード1では、頸部の痛みのみがみられます。日常的には無症状の犬が、急に激しい痛みにより悲鳴をあげたり、動けなくなってしまうことがあります。
触診時に頸部のこわばりが認められることに加えて、頸部をのばしたり、曲げたりする検査によって痛みが誘発されることが多いです。
症状の進行につれて首を動かすことをためらうがゆえ、頸部を硬直させて頭を低くする特徴的な姿勢をとるようになります。一般的には、内科的治療が選択されます。
再発したり、内科療法への反応が乏しい場合には、手術で対応するようになります。
グレード2
起立可能な不全麻痺(運動機能や感覚が完全には失われない麻痺)の状態となります。足先を軽く引きずる軽度のものから、数メートルしか歩けない重度なものまで様々です。
尾側頸部脊椎脊髄症(7つある頚椎のうち主に尾に近い部分での障害)においては、頸部脊髄障害であるにも関わらず、後ろ足の不全麻痺が最初に現れることが多いのが特徴です。グレード2以降は外科手術の適応となります。
グレード3
起立歩行ができず、横臥位状態(横倒しになった状態)となります。また、重度の頸部脊髄障害によって呼吸筋の麻痺が生じ、呼吸困難により死亡する危険性もあります。
胸腰部椎間板ヘルニアについて
胸腰部の椎間板ヘルニアはグレード1~5に分けられます。グレード1~2は内科療法にて良化する傾向にありますが、グレード3以降は手術が必要となることも多いです。
グレード4と5の間には予後に大きな違いがあり、グレード5の場合には、深部痛覚の消失からの時間経過に伴い、手術を行っても改善しないことが多いです。
できるだけ早急(48時間以内)に椎間板物質を取り出し、圧迫を解除する手術をする必要があります。
症状の改善が乏しいあるいは症状の改善が限局的であった場合には、グレードによらず手術の適応となります。 グレードは急に変換することもあり、注意が必要です。
グレード1
後ろ足の麻痺の状態はなく、背中の痛みだけがみられます。- 背中を丸めている
- 触ったり、抱っこするとキャンと鳴く
- 散歩を嫌がる
などは、痛みがある可能性があります。
グレード2
自力で立つことはできるものの、ふらつきが見られ、正常な歩行ができない状態です。 後ろ足をひきずって歩いていることもあります。 足の甲が地面についている(ナックリング)状態もしばしばみられ、歩行時に足が滑ったり、爪が削れてしまいます。
グレード3
グレード3においては、不全麻痺にて立つことができなくなります。 後ろ足を動かすことができず、腰をあげることもできません。 痛覚は残っているため、足先を軽くつねった際には、痛みを生じひっこませます。自分の意思で排泄のコントロールは可能です。
グレード4
グレード4以降は完全麻痺(完全に運動や感覚の機能が喪失した状態)となります。 表在痛覚が消失し、足先の皮膚をつねっても痛みを感じません。 自力排尿・排便が困難で垂れ流しの状態となります。
グレード5
深部痛覚が消失するため、足先の指や骨を鉗子などで強くつまんでも全く痛みを生じません。 グレード4同様、自力での排尿・排便はできず、垂れ流しの状態です。
グレード5においては、『進行性脊髄軟化症』を生じる可能性が5~10%程度あります。 椎間板ヘルニアにより圧迫された部位のみならず、その前後の脊髄がどんどん壊死してしまい、呼吸の異常を引き起こし、死に至るとても怖い病気です。
出血壊死を引き起こした脊髄は、ドロドロに溶け、発症後約1週間程度で亡くなってしまいます。
【まとめ】ダックスフンドはヘルニアの好発品種!初期症状や前兆を解説
椎間板ヘルニアの初期症状や前兆、グレードを知ることで、早くに対応することが可能です。一般的には、グレードが上がるに従い、予後が悪い傾向にあります。背中を丸めている、抱っこするとキャンと言うなどは、ヘルニアの前兆である可能性もあります。愛犬ダックスフンドの異変を感じたら、速やかに受診をするようにしましょう。
参考資料
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,犬の治療ガイド2020,EDUWARD Press,p578-p584
- 椎間板ヘルニアの未来形 後編,mvm,ファームプレス,2015,No152,1月号
筆者について
犬や猫を診察する動物病院で獣医師として8年勤務。その後Webライターやペットの相談業務などに従事。